響子と父さん/石黒正数

タイトル通りオヤジと娘の関係を書いている。娘の響子が恋人を紹介する、くらいしか話らしい話もないのだが日常描写が圧倒的に面白いので全然問題ない。短編集に押井守が寄せた「駘蕩たる日常」というキャッチは本当にこの人に似合っている。しかし考えてみれば、イラストレータの響子と編集者が仲良くなる前の話から結婚を認められている状態の話まで入っており、淡々とした日常の中で時間はきちんと経過してるのだ。
ではなぜこの漫画のまったりした空気感が保たれているのか。それは変化の瞬間が直接描かれないことによると思う。響子と小泉の関係もそのきっかけしか触れられないし、小泉が響子の両親に会う話でさえ父親がどのように彼を受け入れたのかはっきりとはしない。ただ気づくと事態は進行している。
あと『ネムルバカ』のルイが響子の妹として出てきてかわいい。こちら作品の場合は、心象を描いた比喩的なコマを作ったり心象風景を絵に混ぜ込んだりしながら、鯨井ルイがモラトリアムから脱出する様をがっつり書いているので比較すると面白いと思う。

・普通に良い。
・会話中心で動きが無いのに気にならないというのは藤子F不二雄っぽい

響子と父さん (リュウコミックス)

響子と父さん (リュウコミックス)