イン・ワンダーランド/薮内貴広

ティム・バートンのアリスも公開だし不思議の国ものキタぜ! って感じで読みました。といってもこの漫画の主人公はアリスでなくエリゼといいます。ビジュアルはなんとなく似ています。連載中は絵は綺麗だけど話が飲み込めないので単行本化してから読みましたがやっぱり良くわからなかった。というのも話はべつにないんですね。

アリス・イン・ワンダーランドというのは行って帰ってくる話です。不思議の国というのは異界なので兎を追って穴に落ちてそこに入り込んでしまうワケです。そこで変な人達に出会い、不条理な目にあって最終的に帰ってくる。でも『イン・ワンダーランド』の主人公エリゼははじめからワンダーランドの住人なのです。カメや兎が喋っても驚く様子が一向にありません。一話のヌルイ感じとかちょっといっちゃってる感じがありますがそれは、彼女が既に居るべき場所に居る、というところに原因があるように思えます。

その後学校が始まって居場所がないという話とか、森の外の世界に養子へ行くという話もありますが、両方共けっこうあっさりと解決してしまいますし、森の外はラビットホールを通り抜けなくともたどり着ける場所で、馬車は水の上に浮いたり森以上の不思議空間です。このワンダーランドには外部がない。

なので物語的ダイナミズムには欠けるように思います。しかしそんなものは別に必要ないのでこれはこれで素晴らしい。絵の儚く綺麗な雰囲気が箱庭感にマッチしているので、むしろそういった細部を褒めるべきだったかもしれない。良いかんじの漫画でした。

イン・ワンダーランド (BEAM COMIX)

イン・ワンダーランド (BEAM COMIX)