借りぐらしのアリエッティ

異種間のはなしを書いているという点でポニョの別ストーリ―でもある。しかしここでは奇跡が導入されない。ここが宮崎駿との違い。アリエッティはいままでジブリにいないタイプのヒロインだったとは思うがあまり魅力が感じられなかった。脚本段階で宮崎駿は後半のストーリーは緩めに設定していたというが、かなり妥当なラインに落ちている。つまり人と小人は一緒になることはできず、シュウくんのくれた角砂糖はやがてスピラーの木の実にとって代わられるだろうということ。このような落とし込みは良いにしても、アリエッティもシュウもそれに抗う様子がまったく見えない。なにか考えた上で諦めているようにも見えない。これは不思議だった。

観終わった後短く感じたのは、前半は世界観の立ち上げ、後半は見つかる見つからないの緊張の持続で飽きさせなかったからだろう。そういった飽きさせない力とは別に作品のストーリ―がはっきりしないのがこの作品の弱いところだった。余計な物語がないから失敗もしていないけれど、細部だけの映画になっている。

状況は演出できていたと思うけど、その状況に至る内的動機が殆どわからない。シュウくんの話は観念的すぎてまじカヲルくんだったし、お手伝いの意地悪ばあさんの存在は映画にスリルを持ち込むという点では成功しているが、彼女の存在がそのような外的理由にしか見いだせない。ゲド戦記のおかげでこのクオリティなら全然許せる。でもこれが続いたら魅力はなくなると思う。最後のわかれるところとか良い。

あと面白かったのは手伝いのおばあさんがアリエッティを「泥棒小人」と呼ぶところだった。崖の上のポニョでトキさんがポニョを人面魚呼ばわりした時もびっくりしたが、今回のこの部分も、えっ言っちゃうんだ感。となりのトトロではファンタジックな存在を幻想で処理できるようにしていたと思うが、ポニョではみんな本物になっている。そこではっきりしたツッコミが入るわけだが、今回もその系譜なのかもしれない。