昼はそば。母親が作ったカキのはいった汁、なんとなくあんかけのほうが美味そうに思えたので、途中で食事を中断してもらい片栗粉を溶き入れてゆずの皮の刻んだのをいれて出し直した。うまい。母が皮だけむいて置いてあった山芋も切って出した。これもうまい。
食事を終えて部屋に戻ると携帯に不在着信がある。近所の就職支援施設からだった。面談があったのをすっかり忘れていた。折り返したところ、まだ空いている時間があるらしく、その時間に来てくれと言われる。
面談を終えて、せっかく着替えたのだからこのまま出かけようかと考えたところ、観たかった映画が二本立てでやっていることを思い出し目黒へ。映画まで一時間以上間があり、すこし歩いたところにある喫茶店に入った。その場で調べたので、道順のロスもあってまあまあ歩いた気もする。ロースターと書いてあり少し期待したが、実際かなりうまかった。エチオピアナチュラル製法の豆を頼んだ。澄んだ味で落とせていて、良い。細かい種類は忘れた。窓が広い店だった。植本一子の本を少し読む。
映画は内容が直撃しそうな『南瓜とマヨネーズ』目当てだったが、併映の『パターソン』にやられた。ニュージャージー州パターソンのバス運転手の日常。大事にしなければいけないものが描かれている。生活の苦しさはなさそうだったけど、同僚のインド人の愚痴でわかるように、それを消し去った世界ではない。W・C・ウィリアムズやディキンソンが出てくるのも嬉しい。途中で格好いいアカペララップも出てくる。スタッフロールにメソッドマンと書いてあり驚いた。それ自体が詩という映画らしいが、散文的でもあり、また寓話的でもあった。作中に出てくる詩に似ている。振り返ってみると字幕翻訳が全体に散文寄りだった気がする。『南瓜〜』とは音楽をやっている無職との同居という共通点があり、良い二本立てだったと思う。『南瓜〜』では恋愛が終わり、自立した男が曲を作っていた。太賀がとてもよかったなあ。
帰りに二組カップルをみかけた。まずモスで前のテーブルに座った男女。男が急に、流れていた音楽に合わせて「ネバエンディンストーリ〜」と鼻歌を歌って、いいなあと思った。二番の終わりにもう一度「ネバエンディンストーリ〜」と歌っていた。女が手を繋いで引っ張るようにして帰っていって、それもよかった。もう一組は乗り換えを待つ駅のホーム。女が妙にはしゃいで、男に「うるさいの俺達だけだよ」とたしなめられていた。ピョコピョコ跳ねる女の方に感情移入してしまう。自分もそういうところがある。「全然うるさくない」と伝えようかとも思ったが、黙って笑顔で立っていた。こう書くとこわいな。電車に乗ってからも二人はその調子だったが、男のほうも、どこか嫌ではなさそうだった。