テレビで岡村靖幸のライブを観て、一年前ぴあフェスのトリに岡村ちゃんが同じピーチマークの下で披露したその日最高の演奏とそれほどでもないダンスに興奮していたことを思い出していた。調子に乗って小声で音を外しながら歌を口ずさんでいると、番組の時間が半分残っているのにスタッフロールが流れはじめ暗転後ツアータイトルが表示され、深夜放送はもうそこまで通販に侵食されているのかと唖然としかけたのだが、気づくと成海璃子岡村靖幸の対談が始まっており結局無事に唖然としたのだった。岡村靖幸が言うように成海璃子はどんどん美しくなっており、いやはじめの写真集を出したときからすでにその美しさは十分に発揮されていたのだが、とにかく、パジャマみたいな柄の濃紺のシャツワンピースのボタンを上まできっちり留め、ワンピの下に覗く白い脚の先には踝を隠す濃いオレンジのソックスを履いた成海璃子が、黒い髪と韻を踏むピアノブラックの靴でCD棚とDVD棚の間を歩きまわり、ラース・フォン・トリアーが好きだと繰り返し、岡村靖幸ギャスパー・ノエヴィンセント・ギャロと言い間違えたことを何故か理解し、CDに手を伸ばしてはどこが好きかを紹介し、こちらはそれをニコニコと眺めていた。そして気づくと彼女はオリジナル・ラブスーパーカー、トム・トム・クラブなどにまじり坂口恭平のCDを手に取って岡村に薦めはじめ、そこで僕はウアアと思ったのだった。番組前半で唐突にオカモトズのレイジの名前が二人の共通の知人として出てきた時のウアアよりだいぶ強かった。イマイチ自分でも何をいっているかわかっていないが、坂口恭平にはカリスマだけしかないのではという気がしている。なので成海璃子坂口恭平にプライベートビデオを贈ろうと、ライブトークを観に行こうと、それでも騙されないようにと祈りながら毎日を過ごしていこうと思う。
岡村靖幸は話し方も良かった。すっかり好きになってしまう。曲はもともと好きだけれど。人見知りが頑張って社交的になっているという話をしていた。僕は良い曲を作る人は大体そうだという先入観を持っている。そうして若い時より人生はずっと豊かになり、曲からは孤独な美しさが抜け落ちて行くような印象がある。